公務員・教員でも副業ライターは可能?法律と許可の境界線を解説

夜の自宅デスクでノートパソコンを前に、法律の条文資料と原稿を見比べながら考え込むスーツ姿の会社員風の人物 未分類

公務員や教員が副業でライターをするのは、法律上原則制限されており「限りなく黒に近いグレー」です。国家公務員法・地方公務員法が営利目的の副業を制限しているため、無許可のWebライター活動は懲戒処分の対象になり得ます。

ただし、単発の執筆や講演など「執筆活動」と扱われる範囲や、任命権者の許可を得た兼業なら認められる余地があります。さらに2025年6月の総務省通知、2026年4月施行の人事院「自営兼業制度の見直し」と、ルールを明確化・緩和する動きが続いています。

この記事では、公務員・教員が副業ライターを検討するときに知っておくべき法律の根拠、許可の境界線、バレる仕組み、処分の実例、そして最新の制度動向までを整理します。

公務員の副業ライターはなぜ原則禁止?根拠となる法律とは

まず大前提として、国家公務員・地方公務員ともに、営利目的の副業は法律で原則制限されています。

根拠になるのは、国家公務員法第103条・第104条と、地方公務員法第38条です。

国家公務員法103条は、営利企業の役員を兼ねることや、自ら営利企業を営むことを禁じています。さらに104条では、報酬を得て事業や事務に従事する場合、所轄庁の長などの許可が必要と定めています。

地方公務員法38条も同様で、任命権者の許可なしに営利企業に従事したり、報酬を得て事業・事務に携わったりすることを禁止しています。

Webライターの仕事は、企業メディアの記事を書いて報酬を受け取る「営利目的の活動」と判断されやすい働き方です。

そのため、無許可で継続的に案件を受ける副業ライターは、この法律に抵触する可能性が高いというのが現状の整理です。

ここで押さえておきたいのは、「在宅だから」「匿名だから」セーフになるわけではない、という点です。判断されるのは働く場所や名義ではなく、活動の中身そのものです。


Webライターは「執筆活動」に入る?許可の境界線を分ける3つの軸

「執筆活動は公務員でも認められているのでは?」という疑問には、先に結論を示します。

境界線を分ける軸は、次の3点です。

  • 営利性:報酬が「表現への謝礼」か「業務の対価」か
  • 継続性・反復性:単発の寄稿か、反復して案件を受ける働き方か
  • 依頼主との関係:個人の表現活動か、企業の営利活動への従事か

この3軸で「表現寄り・単発・個人の活動」に収まるものは、公務員でも認められる余地が広くなります。具体的には次のような活動です。

  • 専門書や研究論文の執筆
  • 新聞・雑誌へのエッセイの単発寄稿
  • 趣味に基づく書籍の出版
  • 講演会での単発の講話
  • 小規模な不動産賃貸、家業の手伝い、小規模農業など

実際、内閣人事局と人事院が公表している「一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)」(令和6年6月)では、自分の書いた本を出版して報酬を得るような単発の活動は、承認が必要な兼業とは異なる整理が示されています。

一方で、同じ「文章を書く仕事」でも、次のケースは3軸すべてが「営利・継続・企業への従事」に寄ります。

  • 継続的に依頼を受けて報酬を得るWebライター活動
  • 企業の宣伝・広告記事の執筆
  • 商業メディアでの収益目的のライティング

クラウドソーシングで案件を受け続ける典型的な副業Webライターは、まさにこの類型です。ここが「グレーだが限りなく黒に近い」と言われる理由になっています。


地方公務員の兼業緩和はどこまで?2025年6月の総務省通知(総行公第72号)

近年の大きな動きが、2025年(令和7年)6月11日に総務省が発出した通知「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について」(総行公第72号)です。

これは総務省自治行政局公務員部長名で各都道府県知事などに宛てられた技術的助言で、兼業を希望する地方公務員が兼業しやすい環境を整えることが目的とされています。

ポイントは、法改正ではなく「運用の明確化」だという点です。

通知では、各自治体が住民の理解を得られるよう詳細かつ具体的な許可基準を設定・公表すべきとし、「能率の低下のおそれがない」「利害関係・職務の公正を妨げるおそれがない」「職員・職務の品位を損ねるおそれがない」という基本原則が示されました。

先行事例も積み上がっています。神戸市は2017年から公益性の高い地域貢献活動への兼業を許可制で認める制度を運用し、福井県も2019年度に公益性の高い活動を月30時間以内で認める地域ビジネス兼業制度を創設しました。

さらに鳥取県は2025年に許可基準を明確化し、週8時間以内・月30時間以内を目安とした運用を同年9月から始めています。

実際に通知や各自治体の基準を読み比べて気づくのは、内容の中心が「何を解禁するか」ではなく「時間の上限と利害関係の線引き」だという点です。福井県も鳥取県も月30時間前後を目安にしており、「本業に食い込まない範囲なら認める」という相場観が自治体側にできつつあると読めます。

ただし注意したいのは、これらはあくまで公共性・地域貢献性のある活動が主な対象だということです。商業メディアのライター業務がそのまま解禁されたわけではありません。


国家公務員のブログ・執筆はどう整理される?人事院Q&A集と2026年4月の制度見直し

「書いて収入を得ること」全般については、国レベルの整理も進んでいます。

前述の「一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)」(令和6年6月、内閣人事局・人事院)では、YouTubeやブログのアフィリエイト収入について「それだけをもって兼業には該当しない」としつつ、営利目的や継続性・反復性、規模(主に収入額)によっては承認・許可が必要になり得ると明記されています。

つまり「一律アウト」ではなく、判断基準はここでも営利性・継続性・規模なのです。

ではWebライターはこの基準でどう整理されるか。クライアントから依頼を受け、納品への対価として報酬を得て、それを反復する働き方は、「たまたま収入が発生した」アフィリエイトとは性質が異なります。営利目的と継続性がはっきりしているぶん、趣味ブログよりも兼業と判断されやすいと考えるのが自然です。

そしてもう一つ、2026年に入って大きな動きがありました。

人事院は2025年12月19日、「自営兼業制度の見直し」を発表し、2026年(令和8年)4月1日から、国家公務員が「知識・技能をいかした事業」「社会貢献に資する事業」を承認基準を満たせば行えるようにしました。

想定例はハンドメイド品の販売、スポーツ・芸術教室、地域振興イベントの主催などです。従来は不動産賃貸・太陽光発電・家業継承などに限られていた自営兼業の枠が、大きく広がった形です。

一方で、この新制度でも転売(せどり)のような活動は対象外とされ、収入見込みが年間20万円を超える場合は規模の観点から「自営」として承認手続きが必要になるなど、線引きは明確に設けられています。

「書く仕事」との関係で言えば、自費出版や教材のような知識・技能型の活動は申請の枠組みに乗せやすくなった一方、商業メディアの受託ライティングが自動的に認められたわけではない、というのが現時点の整理です。

※画像はAIによるイメージ

教員の副業ライターは可能?公立・私立・非常勤で変わるルール

教員の場合、答えは雇用形態によって大きく変わります。

公立学校の常勤教員は地方公務員なので、地方公務員法38条の制限をそのまま受けます。無許可の商業ライティングは原則NGです。

背景には厳しい勤務実態があります。2022年の教員勤務実態調査では、小学校教諭の時間外勤務は月平均約82時間、中学校では約100時間に達しており、給特法のもとでは残業代の代わりに一律の「教職調整額」が支給されるだけでした。

この教職調整額は長らく給料月額の4%でしたが、2025年6月成立の改正給特法により、2026年1月から段階的に引き上げられ、2031年1月に10%となる予定です。とはいえ2026年時点では引き上げが始まったばかりで、収入が一気に増えるわけではなく、副業ニーズが高まるのは自然な流れです。

ただし法律上できるのは、単発の原稿執筆や講演、模試の採点、教材の校正など「執筆活動・専門性の提供」に近い範囲です。運用は自治体により異なるため、教育委員会への事前相談が現実的な進め方になります。

非常勤講師は制限が緩和されており、職務に支障がない範囲で副業が可能なケースが多くあります。

私立学校の教員は地方公務員法の適用外で、可否は学校の就業規則次第です。副業が届出制や許可制なら、手続きを踏めばライター業も選択肢に入ります。


副業ライターはバレない?住民税・SNS・内部告発という現実

「ペンネームで顔出しなしなら、バレないのでは」と考える方は多いはずです。実際、Webライターは匿名で活動でき、報酬も給与所得ではなく雑所得になるため、発覚しにくい副業だと言われてきました。

しかし、バレるルートは確実に存在します。主なものは次の4つです。

  • 住民税の増加:副業所得を確定申告すると翌年度の住民税が増え、給与天引き(特別徴収)を通じて勤務先に通知される
  • SNSやネット上の活動:記事の執筆者欄やプロフィールから同僚・上司に特定される
  • 内部告発:同僚や知人に話したことが人事に伝わる
  • 業務への影響:夜間の執筆による寝不足や集中力低下から疑われる

住民税については、確定申告時に「自分で納付(普通徴収)」を選べば職場への通知を避けやすくなりますが、リスクがゼロになるわけではありません。

そして何より、「バレにくい」と「やってよい」はまったく別の話です。発覚した場合の処分は決して軽くありません。

※画像はAIによるイメージ

バレたらどうなる?戒告から免職まで、処分の実例と分かれ目

公務員の副業が発覚した場合のペナルティは、軽い順に戒告・減給・停職・免職の4段階です。

戒告は文書や口頭での注意ですが、人事評価や昇進に響く可能性があります。減給は収入が多い場合や継続期間が長い場合、注意後もやめなかった場合に科されやすくなります。

実例もあります。奈良市では、病気休暇中に家族が経営するプールでフルタイムのアルバイトをしていた職員が6か月の停職処分に。佐賀県では、賃貸収入を累計で約7,000万円得ながら改善命令に従わなかった消防職員が懲戒免職になっています。

この2件を読み解くと、共通点は「規模・態様の逸脱」と「指導の無視」です。不動産賃貸は本来、公務員に認められ得る副業ですが、規模が大きすぎたり是正に応じなかったりすれば最も重い処分に至る。裏を返せば、事前に申告し、指摘されたら即座に是正する姿勢があるかどうかが、処分の重さを分ける現実的な分岐点だと筆者は見ています。

Webライターの副業で処分された事例はネット上にほとんど見当たりませんが、それは「安全だから」ではなく「表面化しにくいから」にすぎません。処分の枠組み自体は、ライター業にもそのまま適用されます。


公務員の兼業許可申請の書き方は?通りやすくするポイント

法律の枠内で執筆に関わりたい場合、鍵になるのは事前の許可申請(または相談)です。

審査する側が見ているのは、通知や人事院の承認基準にも表れているとおり「本業に支障が出ないか」「職務の公正と品位を保てるか」の2点です。申請では、この2点に正面から答える書き方が有効です。

  • 業務内容を箇条書きで明示する(例:夏休み期間中の模試採点業務)
  • 従事日数・時間を数字で示す(先行自治体の週8時間・月30時間の目安が参考になる)
  • 報酬の概算を記載する
  • 本業への貢献(教科指導力の維持向上など)を説明する
  • 勤務時間外・長期休暇中のみ実施することを明記する

報酬の目安としては、求人サイトや募集要項の例を見る限り、模試採点は1枚50〜200円、教材執筆は1本3,000〜30,000円、講演謝金は1回10,000〜50,000円程度の案件が多く見られます。教員の専門性を活かしやすい領域と言えるでしょう(金額は案件により変動するため、応募時に必ず最新の条件を確認してください)。

副業収入の税金は?確定申告の要点だけ押さえる

税金面の要点は3つに絞れます。

給与以外の所得(収入から経費を引いた額)が年間20万円を超えると確定申告が必要です。判定は「収入」ではなく「所得」で行います。

20万円以下でも、住民税の申告は別途必要です。

また、原稿料や講演料は支払側が10.21%を源泉徴収しているケースが多く、確定申告をすれば還付を受けられる場合があります。詳細は国税庁の案内や税務署で確認してください。


考察:グレーゾーンに踏み込む前に考えてほしいこと

ここからは筆者としての私見です。

私自身は公務員ではなく会社員ですが、本業のかたわら動画編集の副業を始めた最初の数か月は、報酬が月に数千円ということも普通にありました。しかも初めての確定申告では、住民税の「普通徴収」のチェック欄を見落としかけて、提出直前に税務署の資料を読み直して冷や汗をかいた経験があります。

この経験から言えるのは、副業の初期はリターンが小さいわりに、手続きミスひとつのダメージが大きいということです。会社員の私ですらそうなのですから、発覚が処分に直結する公務員なら、なおさらです。

Webライターの初期の収入は月数万円程度になることも珍しくありません。その数万円のために、減給や停職、最悪の場合は職を失うリスクを背負うのは、割に合わない賭けだと考えます。

一方で、悲観する必要もないと思っています。単発の寄稿や講演、専門性を活かした執筆など、制度の枠内でできる「書く仕事」は確かに存在するからです。

特に教員の方なら、教材執筆・採点・講演といった「教育の専門性×文章」の領域は、許可を得やすく単価も比較的高い傾向があります。いきなり商業メディアのライターを目指すより、まずこの領域で実績を積むほうが現実的です。

制度の流れも追い風です。神戸市(2017年)、福井県(2019年度)と自治体レベルで積み上がった地域貢献型兼業の流れを、2025年6月の総務省通知が全国標準へ広げ、2026年4月には人事院が国家公務員の自営兼業の枠を「知識・技能」「社会貢献」まで拡大しました。この時系列を踏まえると、個人的には、今後数年で「公共性のある執筆・発信」の許可範囲はさらに広がっていくと見ています。

だからこそ今やるべきは、隠れて始めることではなく、自分の自治体・学校の運用を確認し、許可の取れる形を探すこと。そして、いずれ環境が変わったときにすぐ動けるよう、勉強や小さな実績づくりを進めておくことだと考えます。


まとめ:公務員・教員の副業ライターは「許可の枠内」で考える

公務員・教員のWebライター副業は、国家公務員法103条・104条、地方公務員法38条により原則制限されており、無許可の商業ライティングは限りなく黒に近いグレーです。

一方で、単発の執筆・講演など「執筆活動」の範囲や許可を得た兼業なら道は残されています。2025年6月の総務省通知(総行公第72号)、2026年4月施行の人事院「自営兼業制度の見直し」と、環境整備は着実に進んでいます。

「バレにくいからやる」のではなく、「許可の取れる形で堂々とやる」ことが、長く続けるための現実解です。


よくある質問

公務員がペンネームでWebライターをすればバレませんか?

匿名で活動しても、住民税の増加や内部告発、SNSでの特定などから発覚する可能性があります。バレにくいのは事実ですが、発覚すれば戒告・減給・停職・免職などの処分対象になり得るため、無許可での活動は避けるべきです。

公務員でも許可なくできる執筆活動はありますか?

内閣人事局・人事院の「一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)」(令和6年6月)では、自著の出版など単発・非反復の活動は承認が必要な兼業と異なる整理が示されています。ただし営利性・継続性・規模によって判断が変わり、自治体ごとに運用も異なるため、事前に人事担当や教育委員会へ確認するのが確実です。

2025年6月の総務省通知で、公務員の副業ライターは解禁されましたか?

解禁されていません。この通知(総行公第72号)は各自治体に兼業許可基準の明確化・公表を促す技術的助言で、主な対象は地域貢献など公益性の高い活動です。2026年4月の人事院の自営兼業制度見直しも、商業メディアのライター業務を自動的に認めるものではないため、個別の可否は所属先への確認が必要です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました