会社員の副業ライターが会社にバレる主な原因は「住民税の通知」と「人づての情報」の2つで、就業規則の確認と納税方法の工夫でリスクは大きく下げられます。
はじめまして。本業のかたわら動画編集の副業を数年続けてきた40代会社員、篠原美和です。私自身が「バレたらどうしよう」と悩みながら副業を始めた当事者として、この記事を書いています。
この記事では、厚生労働省のガイドラインや実際の裁判例といった一次情報をもとに、会社員の副業ライターがバレる仕組みと、就業規則・禁止リスクへの現実的な向き合い方を整理します。
副業ライターは法律違反?「副業禁止」の正体は就業規則
まず前提として、会社員の副業を禁止する法律はありません。
日本国憲法第22条第1項は職業選択の自由を保障しており、勤務時間外の時間をどう使うかは本来その人の自由です。副業禁止の会社でライターをしても、法律で罰せられることはないのです。
では何が「副業禁止」の根拠になっているかというと、それぞれの会社が定める就業規則です。
「従業員は、会社の許可なく他の営業、事業に従事してはならない」といった条文が就業規則にあり、その違反が懲戒処分の対象とされている——これが「うちの会社は副業禁止」の正体です。
つまり、副業ライターを始める前に最初にやるべきことは、ネット検索ではなく自社の就業規則を読むことです。
- 副業が全面禁止なのか、許可制・届出制なのか
- 違反した場合の懲戒規定はどうなっているか
- 競業や情報漏えいに関する条項はあるか
この確認をせずに走り出すのは、ルールブックを読まずに試合に出るようなものです。順番だけは間違えないようにしましょう。
厚労省モデル就業規則の改定で副業は原則容認へ
意外と知られていませんが、国の政策はすでに「副業を認める方向」へ大きく舵を切っています。
厚生労働省は、平成29年3月28日に決定された「働き方改革実行計画」を踏まえ、平成30年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成しました。
同じ平成30年1月にはモデル就業規則も改定され、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という副業禁止の規定が削除されています。これは象徴的な転換点でした。
ガイドラインはその後も令和2年9月、令和4年7月に改定され、解説パンフレットも継続的に更新されています。最新版は厚労省の公式サイトで確認できます。
現在のモデル就業規則では、副業・兼業について次のような構造になっています。
- 労働者は、勤務時間外において他の会社等の業務に従事できる(原則容認)
- ただし、次のいずれかに当たる場合、会社は禁止・制限できる
- ① 労務提供上の支障がある場合
- ② 企業秘密が漏洩する場合
- ③ 会社の名誉や信用を損なう行為、信頼関係を破壊する行為がある場合
- ④ 競業により企業の利益を害する場合
また労働法の実務では、理由を問わず副業を一律に禁止する就業規則は、公序良俗に反して無効と判断される可能性があるとする見解が知られています。
とはいえ、「無効かもしれないから無視していい」という話ではありません。就業規則が生きている以上、違反すれば懲戒の火種にはなり得ます。
国の流れは追い風、でも自社ルールは別物——この二重構造を理解しておくことが大切です。
副業ライターが会社にバレる2大ルートとは?住民税と「人の口」
「Webライターは顔出し不要・ペンネームOKだからバレない」とよく言われますが、正確にはバレにくいだけで、バレるルートは存在します。
代表的なのは次の2つです。
① 住民税の金額
住民税は前年の所得に応じて決まり、会社員の場合は給与から天引き(特別徴収)されるのが基本です。
副業分の住民税まで給与天引きに合算されると、本業の給与額に対して住民税が不自然に高くなり、経理担当者に気づかれる——これが定番のバレ方です。
目安として、住民税の所得割は課税所得ベースでおおむね10%です。仮に副業の課税対象となる所得が年間50万円なら、住民税は5万円前後上乗せされ、同じ給与水準の同僚と比べて浮いた数字になります。
② 人づての情報
もう1つが、同僚や友人への「うっかり話」です。信頼して打ち明けた話が社内に広まってしまった、という報告はネット上でも珍しくありません。
税金は仕組みで防げますが、口から漏れた情報は回収できません。この2つのルートを押さえるだけで、リスクの大半は管理できると考えてよいでしょう。

副業の20万円ルールとは?確定申告と住民税申告の分かれ目
バレ対策の土台になるのが税金の手続きなので、ここで整理しておきます。
副業の所得(収入から経費を引いた額)が年間20万円を超えたら、所得税の確定申告が必要です。20万円の基準は売上ではなく所得である点に注意してください。
ライティングの学習書籍代、有料ツール代、通信費の一部などは経費になり得ます。よくある失敗が、レシートを取っておかず経費を証明できないパターンです。
そして見落とされがちなのが、副業所得が20万円以下で確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は市区町村に別途必要という点です。
「20万円以下なら何もしなくていい」は誤解です。所得税と住民税でルールが違う、と覚えておきましょう。
確定申告をする場合は、確定申告書第二表の「住民税に関する事項」にある徴収方法の欄で、「自分で納付(普通徴収)」を選択できます。この一箇所の記入が、次章で説明するバレ対策の核心です。
バレるリスクを下げる対策5つ。住民税は「普通徴収」が鍵
対策の骨格は、住民税は自分で納付(普通徴収)を選び、活動は匿名・業務委託型にし、社内では一切話さない——この3本柱です。
1. 住民税は「自分で納付(普通徴収)」を選ぶ
確定申告書第二表で「自分で納付」を選ぶと、原則として副業分の住民税は自宅に納付書が届き、本業の給与天引きとは切り離されます。
ただし注意点が2つあります。
- 20万円以下で確定申告をしない場合も、市区町村への住民税申告の際に普通徴収を選ぶ手続きが必要
- 普通徴収が認められるかは自治体の運用次第。特別徴収への一本化を進める自治体では合算されるケースもあるため、心配なら市区町村の税務窓口に事前確認を
2. 所得は「収入−経費」で正しく計算し、記録を残す
前章のとおり、20万円判定も納税額も経費計算が前提です。領収書とレシートの保管を習慣にしましょう。
3. ペンネームで活動し、本名・顔写真・勤務先を出さない
記名記事や監修で本名・顔出しが必要な案件は、条件が良くても避けるのが無難です。ありがちな失敗は、副業用SNSに本業の知人が紛れ込んで特定されるケース。アカウントは完全に分けます。
4. クラウドソーシングなど「業務委託型」で働く
クラウドワークスやランサーズなどは匿名でのやり取りが基本です。副業先に雇用される形(給与所得)だと、給与支払報告書が市区町村に提出され、住民税経由で本業側に伝わりやすくなります。アルバイト型を選んでこの仕組みで発覚するのは典型的な失敗例です。
5. 会社では副業の気配を消す
社内で副業の話をしない、会社のパソコンや休憩時間に副業関連のページを開かない、スマホの通知を切る。実際のバレ話の多くは、こうした気の緩みから起きています。
要点は次の表に一本化しておきます。
| バレる原因 | 対策 |
|—|—|
| 住民税の通知額 | 確定申告書第二表で「自分で納付」を選ぶ(自治体運用は要確認) |
| 給与支払報告書 | 雇用型ではなく業務委託型(クラウドソーシング等)で働く |
| 本名・顔出し | ペンネーム活動、身バレ案件は受けない |
| 社内での会話 | 同僚にも一切話さない |
| スマホ・PCの画面 | 通知オフ、会社の端末・時間で副業をしない |
ただし、正直に言わせてください。これらは「リスクを下げる方法」であって、就業規則違反そのものを帳消しにする方法ではありません。禁止規定がある会社で副業をする以上、ゼロリスクは存在しない——その前提で判断すべきです。
副業禁止でも処分が無効になるケースは?裁判例から見る境界線
結論から言うと、裁判所が見ているのは「規則に違反したか」以上に、本業への実害と悪質性の有無です。この視点で裁判例を並べると、境界線が見えてきます。
- 小川建設事件(東京地裁・昭和57年11月19日決定):無断で毎日6時間、深夜にキャバレー勤務。本業への支障が大きく解雇有効
- ナショナルシューズ事件(東京地裁・平成2年3月23日判決):商品部長が同業の靴小売店を自ら経営。競業の悪質事案で解雇有効
- 東京貨物社事件(東京地裁・平成12年11月10日判決):在職中に競合する事業に関わり、会社に入るべき取引を自らの側に流した背信的な事案。会社の利益を直接害したとして処分有効
- 十和田運輸事件(東京地裁・平成13年6月5日判決):副業は年1〜2回程度で本業に支障なし、会社も黙認。懲戒解雇は無効
いずれも労働判例として広く紹介されている事案です。
処分が有効になったのは、長時間の深夜労働や競業・利益の横流しといった、本業や会社に実害を与える悪質なケースに集中しています。
一方、実害のない小規模な副業への懲戒解雇は無効とされました。労働契約法16条の解雇権濫用法理により、客観的に合理的な理由を欠く解雇は無効になるためです。
勤務時間外に細々と記事を書くWebライター副業で、本業に支障が出ていないなら、重い処分は法的に通りにくい——これが実務の相場観といえます。
ただし例外があります。公務員は国家公務員法103条・104条、地方公務員法38条で副業が法律上制限されているため、会社員とは全く事情が異なります。公務員の方は、Webライター副業は避けるのが賢明です。

もし副業がバレたら懲戒される?やってはいけない対応と正しい対応
会社から副業を指摘されたときの対応も、あらかじめ知っておくと冷静に動けます。
まず、慌てて全部認める前に、会社側の話を聞くこと。指摘が確たる証拠に基づくとは限らず、状況の確認が先です。
一方で、私がおすすめしないのは「投資の利益だと言い張る」といったその場しのぎの嘘です。ネット上ではよく紹介される手ですが、嘘が後から崩れれば信頼関係の破壊という、より重い問題に発展しかねません。
言い逃れできない状況なら、ルールを破った点は誠実に謝罪したうえで、副業が必要だった事情を率直に伝えるほうが、長期的には自分を守ります。
処分が重すぎると感じた場合には、労働審判という手続きもあります。裁判所が労使トラブルを迅速に解決するための制度で、本業に実害を与えていない副業への過剰な処分であれば、争う余地は十分あります。
そして根本的な解決策として、副業OKの会社への転職も選択肢です。副業を認める企業は採用市場で増えており、隠れて続けるストレスと天秤にかける価値はあるでしょう。
考察:バレない技術より「バレても守れる働き方」を設計する
ここからは私見です。冒頭で触れたとおり、私は40代の会社員として本業を続けながら、動画編集の副業を数年やりくりしてきました。ジャンルは違いますが、「会社に隠れて副業を始める不安」はライターの方と同じ道を通ってきたつもりです。
私が実際にやった住民税と社内対応
私自身、副業1年目の確定申告で第二表の「自分で納付」に印を付け、翌年6月に副業分の納付書が自宅に届いたことを確認して、ようやく肩の力が抜けた経験があります。
社内では、副業の話題を自分から一切出さず、スマホの案件通知はすべてオフにしました。地味ですが、この2つを徹底しただけで「見つかるかも」という不安はかなり小さくなりました。
一方で痛感したのは、「バレないか」を最大の関心事にしている段階が、実はいちばん消耗するということです。常に後ろめたさを抱えて作業する状態は、時間も体力も限られる40代の会社員には精神的コストが高すぎます。
裁判例の「4つの地雷」を踏まない設計
だからこそ私は、発想を「バレない技術」から「バレても致命傷にならない設計」へ切り替えることをおすすめしたいと考えています。
具体的には、裁判例が示した4つの地雷——本業への支障・競業・情報漏えい・会社の信用毀損——を構造的に踏まない副業設計にすることです。
本業と無関係なジャンルで書く、睡眠時間を削らない稼働量に抑える、勤務時間中は一切触れない。この3点を守っている限り、仮に発覚しても重い処分は法的に通りにくく、交渉の余地が残ります。
健康リスクという盲点と今後の見通し
もう1つ、個人的に注目しているのが、厚労省が「マルチジョブ健康管理ツール」というスマホアプリを開発・公開している点です。令和3年に公開され、App StoreやGoogle Playから無料で入手できるもので、本業と副業の労働時間や健康状態を自己管理する仕組みです。
国が副業を促進しつつ、過労リスクを本気で心配していることが読み取れます。
実際、副業の失敗として語られるのは「バレた」より「納期に追われて本業も体も壊した」ほうが目立ちます。就業規則より先に、自分の生活時間の就業規則を決めるべきだ、というのが筆者の実感です。
今後の見通しとしては、平成30年のモデル就業規則改定から続く流れを見る限り、副業容認は不可逆のトレンドと考えられます。数年単位で見れば「副業禁止」は採用面で不利になり、規定を見直す企業はさらに増えるでしょう。
焦って規則を破るより、規則が変わる側に賭けつつ、今は白の範囲で準備を進める——それが遠回りに見えて、いちばん確実な道だと私は考えます。
まとめ
会社員の副業を禁止する法律はなく、禁止の根拠は各社の就業規則にあります。国は平成30年のモデル就業規則改定以降「原則容認」へ舵を切っており、一律禁止の規定は無効となる可能性を指摘する実務見解もあります。
バレる主因は住民税と人づての情報で、確定申告書第二表での普通徴収の選択(自治体運用の確認は必要)・ペンネーム活動・社内で話さないことでリスクは下げられます。
ただし裁判例が示すとおり、本当に問われるのは「本業への実害」。バレない工夫よりも、本業に支障を出さない・競業しない・情報を漏らさない働き方の設計こそが、副業ライターを長く続ける土台になります。
よくある質問
副業禁止の会社でWebライターをしたら法律違反になりますか?
なりません。副業を禁止する法律はなく、あり得るのは就業規則違反としての懲戒処分です。まず自社規則の確認が先決です。なお公務員は国家公務員法・地方公務員法で別途制限されています。
副業所得が年間20万円以下なら何もしなくていいですか?
所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は所得額にかかわらず市区町村に必要です。その際に納付方法を「自分で納付(普通徴収)」にすることで、原則として本業の給与天引きと切り離せます。ただし自治体の運用次第で認められない場合があるため、窓口での確認が確実です。
副業がバレたら必ず解雇されますか?
必ずではありません。労働契約法16条により、合理的理由を欠く解雇は無効です。十和田運輸事件のように、本業に支障がなく会社が黙認していたケースでは懲戒解雇が無効とされました。一方、競業や利益の横流しなど悪質な事案では解雇が有効になった例もあります。


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