東証の英文同時開示義務化で、IR翻訳は速さと正確さを同時に問われる仕事へ変わりました。
2025年4月に制度が始まり、同年8月時点ではプライム市場上場会社の95%、1,543社が英文の決算短信を日本語版と同時に開示しています。ログミー株式会社も金融・IR分野の日英翻訳者とチェッカーを業務委託で募集しており、制度変更が具体的な仕事へどう結びついているのかが見えてきました。東京証券取引所+1
東証の英文同時開示義務化とは?何が変わったのか
2025年4月1日から、東証プライム市場の上場会社には、決算情報と適時開示情報を原則として日本語と同時に英語でも開示することが求められています。
対象となる決算情報は、決算短信・四半期決算短信と、企業が日本語で作成している決算補足説明資料です。
適時開示情報については、業績予想の修正、組織再編、資本業務提携、役員人事など、上場規程に基づいて公表するすべての適時開示項目が対象です。東京証券取引所+1
ただし、制度は「日本語資料の全文を、常に同じ分量で翻訳しなければならない」という内容ではありません。
決算情報と適時開示情報は、全書類・全文の同時開示が望ましいとされる一方、日本語版の一部または概要を英語で示す方法も認められています。決算短信のサマリー情報だけを先に英訳する対応や、投資家が事案の概要を把握できる範囲を英文で示す対応も制度上は可能です。東京証券取引所+2東京証券取引所+2
一方、株主総会招集通知、コーポレート・ガバナンス報告書、有価証券報告書などは、可能な限り日本語と同時に同一内容を英文開示する「努力義務」とされています。東京証券取引所
制度の対象と位置づけを整理すると、次のとおりです。
書類の区分 主な対象 英文開示の位置づけ
決算情報 決算短信、四半期決算短信、決算補足説明資料 日本語と同時に英文開示。一部・概要でも対応可能
適時開示情報 すべての適時開示項目 原則として日本語と同時に英文開示
その他の情報 招集通知、CG報告書、有価証券報告書など 同一内容の同時開示に努める
2025年9月2日に東京証券取引所上場部が公表した「プライム市場の英文開示義務化後の状況について」では、制度への対応を始めた企業は9割を超えています。
最大1年間の適用猶予を受けた企業は114社で、東証資料ではプライム市場の約7%とされています。残る93%は、原則として日英同時開示を実施する企業です。東京証券取引所+1
ここで注意したいのは、114社という数字を単純に「対応できなかった会社」と解釈しないことです。
東証は制度開始時の負担などを考慮し、所定の書面を提出した会社に最大1年間の猶予措置を設けました。114社は東証の「英文開示義務化の猶予会社一覧」を基に集計された数であり、約7%という比率は丸められています。
今回の制度変更で最も大きく変わったのは、英訳する文書の数だけではありません。
これまでは日本語版を公表してから英文版を作る企業もありましたが、同時開示では、日本語原稿の確定、翻訳、数字の照合、社内確認、TDnetへの登録をほぼ並行して進める必要があります。
言い換えれば、IR翻訳は「時間をかけて自然な英文を作る作業」だけでなく、公開時刻から逆算して品質を管理する開示業務の一部になったのです。
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ログミーのIR翻訳求人では何が募集されている?
ログミー株式会社は、金融・IR分野の日英翻訳者と日英チェッカーを、業務委託・完全在宅で募集しています。
正式な求人名は「【業務委託/完全在宅勤務】日英翻訳者/日英チェッカー(金融・IR分野)」です。
2026年7月23日時点で、ログミー公式採用ページの募集職種一覧に掲載され、求人ページには応募画面も表示されています。副業・Wワークが認められ、出社を必要としないフルリモートの仕事です。logmi.co.jp+1
求人の主な条件は、次のように整理できます。
- 企業名:ログミー株式会社
- 募集職種:日英翻訳者/日英チェッカー
- 分野:金融・IR
- 契約形態:業務委託
- 勤務形態:完全在宅、勤務時間・曜日は固定なし
- 翻訳報酬:原文1文字につき6~12円
- チェック報酬:原文1文字につき2~3円
- 必須経験:2年以上の翻訳実務経験
- 募集状況:2026年7月23日に掲載を確認
求人ページには、案件の難易度や熟練度によって異なるものの、時給換算の目安はおおむね2,500~4,000円と記載されています。
これは発注元が示す目安であり、すべての人が同じ時間内に作業を終えられるという意味ではありません。実際の時給は、調査、問い合わせ、修正、連絡、作業環境の準備にかかる時間でも変わります。ジョブカン採用管理
扱う文書は、単純なWeb記事ではありません。
求人ページには、次の文書例が挙げられています。
- 決算短信
- 決算説明会資料
- 適時開示資料
- 株主総会招集通知
- 有価証券報告書
- 統合報告書
- コーポレート・ガバナンス報告書
- 企業サイトのIRコンテンツ
- 各種報告書
具体的な作業には、既存の開示資料に合わせた用語・表現・トーンの統一、IR関連資料との照合、人名・商品名・サービス名の事実確認、誤字脱字や表記揺れのチェックが含まれます。ジョブカン採用管理
この内容を見ると、求められているのは「日本語を読んで英語に置き換える能力」だけではないと分かります。
前期の資料では「operating profit」と訳していた用語を、今期だけ別の表現に変えれば、同じ指標なのか投資家が迷う可能性があります。人名や製品名のアルファベット表記が過去資料と異なれば、検索や比較もしにくくなります。
IR翻訳では、一文だけ見れば自然な英文でも、過去の公式資料や同じ企業の他文書とつながっていなければ、完成度が高いとはいえません。
一枚の資料を訳すのではなく、企業が積み上げてきた開示情報全体との整合性を守る仕事なのです。
ログミーの求人は、翻訳者とチェッカーの両方に同時応募することも可能です。
使用ツールは、連絡にLINE WORKS、原稿作業にMicrosoft Word、PowerPoint、Excelが挙げられています。案件の割り振りや制作進行は、同社の翻訳コーディネーターが担当すると説明されています。ジョブカン採用管理
繁忙期として示されているのは、4月、5月、6月、8月、11月、2月です。
日本企業の決算発表や四半期決算が集中する時期と重なるため、会社員が副業として応募する場合は、「週に何時間使えるか」だけでなく、繁忙期に納期の短い依頼へ対応できるかも重要になります。
なお、求人システム上の募集拠点には「渋谷本社(2026年4月末まで)」という表示が残る一方、同じページの企業情報欄には東京都千代田区丸の内の所在地が記載されています。
仕事自体は完全在宅と明記されていますが、応募時には契約主体、連絡先、最新の所在地などを改めて確認したほうがよいでしょう。求人情報は掲載後に一部の表示だけが古くなる場合があるためです。ジョブカン採用管理
義務化後のデータはIR翻訳需要の増加を示している?
東証の数字からは英文開示の作業量が大きく増えたことが読み取れますが、翻訳者求人全体が同じ割合で増えたとは断定できません。
2025年8月7日時点の東証調査では、プライム市場上場会社の95%、1,543社が英文の決算短信を日本語版と同時に開示していました。
さらに、決算短信だけでなく、IR説明会資料も同時に英文開示していた企業は48%、784社です。決算短信の英訳範囲を見ると、56%の企業が全文を英訳していました。東京証券取引所
適時開示情報では、全文を英文開示する企業が76%となっています。
2025年4月1日から7月31日までに公表された、決算情報を除く適時開示資料を件数ベースで集計すると、95%が日本語版と同時に英文開示されていました。東京証券取引所
制度開始前と比べれば、英文を用意しなければならない企業と文書が増えたことは明らかです。
ただし、企業がすべて外部の翻訳者へ発注しているとは限りません。社内のIR担当者が作成する場合、翻訳会社へ一括発注する場合、過去資料や機械翻訳を使って下訳し、人が確認する場合など、制作方法は企業によって異なります。
ログミーの求人ページには、東証の義務化に伴ってIR分野の翻訳ニーズが急速に増えていると記載されています。
これは、実際にIR関連サービスを運営し、翻訳者を募集しているログミー側の認識として重要な情報です。一方で、1社の求人説明だけを根拠に、日本のIR翻訳市場全体の求人件数や報酬が上昇したとまではいえません。ジョブカン採用管理
ここは、求人の事実と業界全体への推測を分けて読む必要があります。
確認できる事実は、次の3点です。
- 東証プライム市場で英文同時開示が制度化された
- 2025年8月には決算短信の同時開示が95%まで進んだ
- ログミーが制度変更によるニーズ増加を説明し、翻訳者を募集している
この3点は「IR翻訳の仕事が発生する土台が広がった」ことを示しています。
一方、「未経験者でも受注しやすくなった」「単価が一律に上がった」「翻訳者が不足している」といった結論は、今回確認した資料だけでは導けません。
むしろログミーの求人では、2年以上の翻訳実務経験が必須です。
需要が増えたとしても、公開前の決算情報を扱い、短い納期で数字や用語を確認する仕事である以上、発注側が経験者を求める傾向は不自然ではありません。

海外投資家の評価も、制度の意味を考える材料になります。
東証の海外投資家アンケートでは、日本の上場会社による英文開示の改善を「改善している」または「やや改善している」と評価した回答が合計88%でした。
日本語を扱える担当者がいない海外投資家からは、日英同時開示によって情報面で不利になる状況が一定程度解消されたとの意見が示されています。東京証券取引所+1
その一方で、海外投資家が今後優先してほしい資料として挙げたのは、IR説明会資料、有価証券報告書、IR説明会の書き起こしなどです。
決算短信の概要だけでなく、経営者の説明や質疑応答を含む情報を英語で読みたいという需要が見えます。東京証券取引所+1
ここから考えられるのは、今後の需要が単なる「英文の本数」だけでは測れなくなることです。
短い概要を大量に訳す仕事に加えて、決算説明会のスライド、経営者の発言、質疑応答、財務諸表の注記など、文脈と専門知識が必要な文書へ仕事の重心が移る可能性があります。
AI時代でもIR翻訳者やチェッカーに仕事は残る?
機械翻訳の利用は広がると考えられますが、IR翻訳では原文整理、用語統一、数字の照合、機密管理といった人の作業が残ります。
東京証券取引所が2024年10月に公表した「英文開示実践ハンドブック」は、英文開示を人間の翻訳だけで行う前提にはなっていません。
第2章はプロネクサス、第3章の翻訳外注に関する実務は宝印刷、第4章の機械翻訳は国立研究開発法人情報通信研究機構の隅田英一郎氏が執筆しています。自社作成、外部委託、機械翻訳をどう使い分けるかという、実務家と研究者の視点が組み込まれた資料です。東京証券取引所
同ハンドブックでは、日英同時開示を行うには、翻訳やチェックができる人材を社内外で確保する必要があると説明されています。
機械翻訳を使えば効率化できる一方、全体のスケジュール管理、進捗確認、社内各部署との調整、外部委託先との連絡は別途必要です。東京証券取引所
特に時間がかかると指摘されているのが、固有名詞の調査と、書類内・書類間での用語の整合確認です。
同時開示では、日本語原稿の修正が入るたびに英文へ反映し、複数部署の確認結果もまとめなければなりません。そのため東証のハンドブックは、重要用語を整理した用語集を事前に準備する方法を挙げています。東京証券取引所
これはログミーの求人内容とも重なります。
同社が募集する翻訳者とチェッカーには、過去の開示資料を参照した表現の踏襲、一般的なIR資料との照合、固有名詞の事実確認、表記統一が求められています。
さらに歓迎条件には、AIを活用する環境で新しい取り組みに参加できることや、PhraseなどのCATツールの使用経験も記載されています。ジョブカン採用管理
つまり、AIを使わない翻訳者を求めているのではありません。
AIや翻訳支援ツールを使いながら、出力内容を開示資料として成立させられる人が求められていると読めます。
東証のハンドブックでは、機械翻訳の誤りは翻訳システムだけでなく、主語が省略されている、文章が長く曖昧であるといった日本語原文の問題から起きることも多いと説明されています。
原文を分かりやすく整え、主語を補い、用語集を使うことは、人間翻訳と機械翻訳のどちらにも有効です。東京証券取引所
ここに、IR翻訳で人が担う仕事の輪郭があります。
- 原文の意味が一つに定まるか確認する
- 前期資料と同じ用語を使う
- 数字、単位、期間、勘定科目を照合する
- 日本語原稿の差し替えを英文へ反映する
- 機械翻訳の出力を文脈に合わせて修正する
- 公開前情報を適切に管理する
- 指定時刻までに確認工程を完了する
翻訳会社から納品された英文についても、東証のハンドブックは、投資判断に影響する可能性のある決算数値や勘定科目が原稿どおりか重点的に確認するよう求めています。
公開前の開示書類にはインサイダー情報などの機密情報が含まれるため、外注時には情報管理体制と機密保持契約も重要です。東京証券取引所
AIによって下訳の速度が上がっても、最終責任まで自動化されるわけではありません。
筆者としては、今後減りやすいのは、過去資料を参照せずに文章だけを置き換える作業だと考えます。
反対に残りやすいのは、変更履歴を追い、数字を照合し、用語をそろえ、どの英文を公開してよいか判断する仕事です。
これは「翻訳」というより、日英同時開示の品質管理と進行管理を含む翻訳オペレーションと呼んだほうが実態に近いでしょう。
ログミーのIR翻訳求人は会社員の副業に向いている?
完全在宅で時間と曜日が固定されていない点は副業と組み合わせやすい一方、翻訳未経験者が最初に選ぶ求人ではありません。
ログミーの募集では、副業・Wワークが認められています。
依頼予定は1か月から2週間前に相談され、対応可能な場合に仕事を引き受ける形式です。毎週決まった曜日に勤務する仕事ではないため、本業の予定を見ながら調整できる余地があります。ジョブカン採用管理
しかし、必須条件には2年以上の翻訳実務経験があります。
英語資格、海外滞在経験、金融への関心だけでは、必須条件を満たしたことにはなりません。書類選考後にはトライアルまたは試験とオンライン面接があり、採用後は研修を経て仕事を始める流れです。ジョブカン採用管理
応募を検討する会社員は、少なくとも次の3点を確認したほうがよいでしょう。
1.翻訳実務経験を具体的に説明できるか
「翻訳経験があります」だけでは、IR資料を任せられるか判断できません。
過去に扱った文書の種類、言語方向、文字数、納期、チェック工程、使用したCATツールなどを、守秘義務に反しない範囲で整理する必要があります。
社内業務として翻訳していた場合は、その経験が求人側のいう実務経験に含まれるか、応募時に確認するとよいでしょう。
2.繁忙期に作業時間を確保できるか
勤務時間が固定されていないことと、好きなときだけ作業できることは同じではありません。
日英同時開示は公表日時が決まっているため、日本語原稿が予定より遅れた場合でも、限られた時間で翻訳と確認を進める場面が考えられます。
本業の繁忙期と、求人に記載された4~6月、8月、11月、2月が重なる人は、受けられる案件量を慎重に決める必要があります。
3.表示単価を総作業時間で見直せるか
翻訳報酬は原文1文字につき6~12円、チェックは2~3円ですが、文字を入力している時間だけで仕事は終わりません。
過去資料の検索、用語確認、数字の照合、質問、修正対応などを含めて、総作業時間を記録することが大切です。
たとえば、報酬が1万円でも、翻訳に2時間、資料確認に1時間、修正と連絡に1時間かかれば、実質的には4時間の仕事です。
実質時給=受け取る報酬÷依頼確認から納品完了までの総作業時間
求人ページの時給換算は参考になりますが、自分の作業記録がなければ、生活に無理なく組み込める仕事量は分かりません。

また、会社員がIR翻訳を副業にする場合は、本業の秘密情報を持ち込まないことが欠かせません。
勤務先と同じ業界の企業を担当する場合、公開情報だけで作業しているつもりでも、社内で知った未公開情報や取引先情報が判断へ影響する可能性があります。
勤務先の副業規定、競業避止義務、秘密保持義務を確認し、利益相反が疑われる案件は事前に発注者へ相談すべきです。
忙しい人ほど、受注できる案件を増やすことより、受けない案件の基準を先に決めることが大切です。
納期が本業の重要日程と重なる、作業範囲が曖昧、修正回数が決まっていない、機密情報の管理方法が示されていないといった案件は、報酬だけを見て決めないほうがよいでしょう。
IR翻訳需要は今後どうなる?筆者の考察
筆者はIR翻訳者や金融機関の専門職ではありません。
本記事は、実際にIR翻訳案件を受注したという体験談ではなく、東京証券取引所の一次資料、実務家と研究者が執筆した公式ハンドブック、ログミーの求人票を照合し、会社員の副業という観点から条件を検証したものです。
その前提で考えると、IR翻訳の需要は、少なくとも制度開始前と同じ状態には戻りにくいと見ています。
プライム市場では、決算情報と適時開示情報の日英同時開示が企業行動規範上の義務になりました。2025年8月時点で95%の企業が英文決算短信を同時開示している以上、企業には一度だけでなく、決算期ごとに繰り返す運用が必要です。東京証券取引所
一方で、「制度があるから翻訳者の仕事が増え続ける」と単純には考えられません。
定型的な決算短信は、用語集、翻訳メモリ、過去資料、機械翻訳を組み合わせることで効率化できます。企業内にノウハウが蓄積されれば、同じ文章を毎回ゼロから翻訳する作業は減る可能性があります。
その代わり、投資家が求める資料は広がっています。
東証の調査では、海外投資家から、IR説明会資料、説明会の書き起こし、有価証券報告書、質疑応答などの英文開示を望む声が示されました。また、一部や概要だけでは重要な表や注記が省かれる可能性を心配する意見もあります。東京証券取引所+1
この流れが続けば、今後評価されやすいのは、単に英文を速く作る人ではないでしょう。
- 経営者の発言の意図を崩さず訳せる
- 財務数値と勘定科目を照合できる
- 過去資料との用語統一ができる
- 機械翻訳の誤りを見抜ける
- 日本語原稿の曖昧さを指摘できる
- 短納期でも確認工程を省略しない
- 公開前情報を適切に管理できる
こうした能力を持つ翻訳者、チェッカー、コーディネーターの役割は残りやすいと考えられます。
もう一つの注目点は、義務化の対象が将来広がる可能性です。
2025年9月の東証資料では、プライム市場以外への対象企業の拡大や、英文開示を求める書類の拡大について、実務の進展を踏まえて継続的に検討するとされています。現時点でスタンダード市場やグロース市場への同様の義務化が決まったという意味ではありませんが、今後の検討事項として明記されています。東京証券取引所
筆者としては、IR翻訳の将来を「AIに奪われるか、人に残るか」という二択で見るのは適切ではないと感じます。
実際には、AIが下訳を行い、人が原文、数字、用語、文脈を確認する工程へ変わっていく可能性が高いでしょう。仕事の名前が翻訳者であっても、求められる能力は編集、校正、ファクトチェック、進行管理へ広がります。
会社員がこの分野を目指すなら、英語力だけを伸ばすより、英語、会計・IR知識、確認工程、ツール活用の組み合わせを作ることが現実的です。
ただし、今回のログミー求人は経験者向けです。
未経験者が制度変更だけを見て、すぐに高単価案件へ応募できると考えるのはおすすめできません。まずは現在の職務や過去の経験から、翻訳実務として説明できるものがあるかを確認し、不足する場合は一般文書の翻訳、英文校正、金融資料の読解など、担当できる範囲を段階的に広げる必要があります。
本記事で確認した主な一次資料は、次のとおりです。
- 東京証券取引所上場部「プライム市場の英文開示義務化後の状況について」2025年9月2日公表。英文開示実施状況は2025年8月7日時点。東京証券取引所+1
- 東京証券取引所「英文開示実践ハンドブック」2024年10月公表。第2章をプロネクサス、第3章を宝印刷、第4章を情報通信研究機構の隅田英一郎氏が執筆。東京証券取引所
- 東京証券取引所「プライム市場における英文開示の拡充に関して寄せられた主なご質問と回答(2025年3月更新版)」2025年3月14日公表。JPX FAQ
- ログミー株式会社「【業務委託/完全在宅勤務】日英翻訳者/日英チェッカー(金融・IR分野)」2026年7月23日確認。ジョブカン採用管理
まとめ
東証は2025年4月1日から、プライム市場上場会社の決算情報と適時開示情報について、原則として日英同時開示を義務化しました。
2025年8月時点では、95%、1,543社が英文の決算短信を同時開示し、48%、784社はIR説明会資料も同時に英文開示しています。
ログミー株式会社は、この制度変更に伴ってIR翻訳のニーズが増加していると説明し、完全在宅の業務委託で日英翻訳者とチェッカーを募集しています。
ただし、必須条件は2年以上の翻訳実務経験です。制度によって仕事の土台が広がったことと、未経験者がすぐに受注できることは分けて考える必要があります。
今後は、定型文の下訳に機械翻訳を使う場面が増える一方、数字の照合、用語統一、原文の曖昧さの確認、公開前情報の管理、短納期の進行管理がより重要になると考えられます。
IR翻訳で問われるのは、英語を作る速さだけではありません。投資家が同じ情報を同じ時刻に、誤解なく受け取れる状態をつくる力です。
よくある質問
東証の英文同時開示義務化はすべての上場企業が対象ですか?
現時点で、決算情報と適時開示情報の日英同時開示が義務化されているのは、原則としてプライム市場上場会社です。
スタンダード市場とグロース市場は同じ義務の対象ではありません。ただし東証は、対象企業や対象書類の拡大を今後も検討するとしています。東京証券取引所
ログミーのIR翻訳求人は未経験でも応募できますか?
求人ページでは、2年以上の翻訳実務経験が必須とされています。
英語資格や金融知識があっても、翻訳実務経験の条件を満たすとは限りません。社内翻訳などの経験が該当するか分からない場合は、具体的な業務内容を示して応募先へ確認する必要があります。ジョブカン採用管理
IR翻訳では金融資格が必要ですか?
ログミーの求人では、特定の金融資格は必須条件として記載されていません。
ただし、英文IR関連業務の経験や金融・IR分野の専門知識は重視されています。資格の有無だけでなく、決算短信や財務諸表を読み、数字と用語を正確に確認できるかが重要です。ジョブカン採用管理
執筆:篠原 美和(会社員のための動画編集副業アドバイザー)
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